―眠り猫―
✾眠り猫✾
一人、一本の杉の根本にしゃがみ込んで、泣く。
「こっちにおいで」
そんな私にいつも声をかけてくれるのは、あなた。
絶対に私の味方をしてくれる人。
一瞬の逢瀬と、あなたの言葉と、優しさが、私を一本の杉の根本から立ち上がらせる――……。
私は怖い夢をみた。
私は恐ろしい夢をみる。
それでも、あなたと過ごす日々を夢に見て、私はいつもの場所で眠る。
これは恋と呼ぶには深すぎて、愛と呼ぶには足りない物語――……。
✾彼と私と夢の中✾
これは迷える人の夢の中。
今日も私は迷い人を夢の中へと誘う。
少しでも心安らぐような夢を提供するために。
「どうか、幸せな夢がみられますように」
抱いてはいけない恋心。
知りたくなかった恋の苦しみ。
愛してはいけない人。
叶わない恋。
住む世界が違うのに。
それなのに、傍にいたいと思ってしまうの。
彼は誰かの為に動ける、とてもすごい人。
「私だけがダメなやつ」
✾君と俺と夢の中✾
もう会えない君を想って今日も眠る。
俺は人生に迷っている。
君を知ってしまったから。
もう君を知る前には戻れない――……。
きっと、寂しいのは俺だけ。
きっと、君が必要なのは俺だけ。
きっと、心を囚われてしまったのは俺だけ。
「胸が痛い。全部、奪うなよ」
日常が、過ごせなくなるじゃないか。
なぁ、時折漏らす、迷い人ってなんだ――……?
✾四季折々~私の好きなケーキ~✾
「いってらっしゃい」
「うん、いってくるよ」
そう言って、あなたは振り返ることなく、行ってしまった。
二人で毎年一緒に食べるのは、かぼちゃケーキ。
「次の秋には帰ってくるから」
その言葉を信じて、私はいつも通りの四季を村で過ごす。
だけど……
嘘なんてついたことなんてなかったのに、私の秋は、あの年からこなくなってしまった。
ねぇ、秋っていつまで?
✾四季折々~君の一番好きなケーキ~✾
「いってらっしゃい」
「うん、いってくるよ」
君の顔をみると心が揺らぎそうだから、振り返ることなく、僕は進む。
二人で毎年一緒に食べたのは、かぼちゃケーキ。
「えっ、どうしても行かなくちゃダメなの?」
君の優しさに甘えて、僕は村とは違い過ぎる四季を街で過ごす。
だけど……
嘘ばかりを重ねていたからだろうか、僕の秋は、あの年から来なくなってしまった。
ああ、君の秋って、いつまで?
✾
✾
✾
✾
私の秋は
僕の秋は
どこに行ってしまったのか――……。
あなたと私の
僕と君の
四季折々。
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「眠り猫」
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✿収録作品✿
眠り猫
彼と私と夢の中
君と俺と夢の中
四季折々~私の一番好きなケーキ~
四季折々~君の一番好きなケーキ~
あとがき
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