
星のカケラ~しほのカケラ事件簿~
しほが日記とアルバムをまとめています…°˖✧
ここではしほがみんなから聞いたり、自分がみたりした事件を日記に綴っているのを覗き見できます☆ミ
これはしほたちの日常の、些細でとても大きな、星のカケラの事件簿
恋のカケラ~キャプテンに続け~
今日も、ヘルメットが綺麗に磨かれている。それも、自分の番号のユニフォームのほつれてたところも補強してある。
「……天使だ」
それでやっぱり臭いがちな、部室や用具。そういうのも綺麗に掃除してくれていて、消毒してくれたのかな。若干、フローラルな香りが残ってるんだ。
換気された部室。数センチほど開けられている窓から風が吹き込み、カーテンが揺れる。
「……いや、女神か」
自分の番号のユニフォームをぎゅっと握り、天井を見上げながら、目を瞑る。女神の姿を想像しながら。
きっと、俺は恋をしている。
うちの大学のアメフト部は強豪校で有名だ。そのため少しばかり、大学生の部活にしては、厳しい。だからだろうか、何故か、よくあるような女子マネージャーというのが、いない。
いつも、自分たちで清掃も、用具の手入れも行ってきた。特にこういうのは、新入生は練習についていくだけで精いっぱいだから、二回生、三回生を中心に当番制で行うのが習わしだ。
けれど一体全体、どういうことか。自分が二回生になってから、毎日、誰かが既に清掃してくれているのだ。
それも、今までにはなかったような、きめ細やかなユニフォームの修繕や、フローラルな香りまで。
これはきっと、この部の中の誰かに恋する女子が、毎朝こっそりと健気に清掃してくれているに違いないと、そう噂されていた。
けれど、今日。女神はついに、その恋の相手を明かしてくれたのだ。
「……俺の、番号。俺の……ユニフォームを……!」
こんなにこっそりと、それも誰にもバレないように、毎日清掃してくれているのだ。そして、気持ちの伝え方が、ユニフォームの修繕なんて!
内気でちょっと恥ずかしがり屋な子に違いない。いつも、清掃当番が来る前には、姿を消している。だから、誰も彼女の姿をみたことはない。無論、容姿なんて想像もつかない。だけど、そんなのは関係ない。
髪が長かろうが、短かろうが、背が高かろうが、低かろうが。年上だろうが、年下だろうが。全然、いいんだ。
君のその気持ちが……
ガタリと、部室の奥で物音がして慌ててそちらの方を振り向く。
そのままガタガタと向こう側から落ちてくるヘルメットに紛れて、持ち運び用のソーイングセットが、俺の足元に滑り落ちてくる。
そのソーイングセットに自然と視線が行く。そこに近づいてくる、人影。
俺はつい先ほど、どんな子でもいい、気にならないと言った。
だが、いざ、彼女が……俺の女神が目の前にいると思うと、視線をすぐにあげることが、できなかった。
心臓が、激しく鼓動する。
「あ、あ、あの……」
✲✲✲
お礼のカケラ~名画にお願い~
友人からの返信をみて、溜息が零れる。
「やっぱり、急には無理だよね」
じっと、二枚のチケットをみる。もう、最終の入館時間が差し迫っていた。
「後は……」
先ほど外出中だと断られてしまった友人以外で、自分の連絡先一覧から、今、連絡が取れるのは、あと一人だけ。
きっと、美術館から一番近い場所にいる人。
でもきっと、私にとっては、一番遠い、男の人。
それでも本当は、私にとって、一番恋焦がれる、人。
いつも自分のスマホの連絡先一覧はスライドさせることなく終わってしまう。そこに名を連ねるのは、家族と、唯一の友達と、優しい先輩たち二人だけだから。
……それと、無理矢理連絡先を聞いた、あの人。
「…………」
だけど、今日は初めて、あの人の下にさらに名前が連なり、画面をスライドさせることが、できた。
「……やっぱり、ダメ元で連絡してみて……それでダメだったら、一人ででも行こう」
だって、みんな、今まさに、頑張ってるところなんだから。
それで、しほ先輩に頼まれたもの、絶対買いたい。萌咲先輩に少しでも笑ってほしい。できたらチケットも二枚とも、無駄にしたくない。
うん。
私は意を決して、あの人の名前をタップする。
あの人と出会ったのは、ちょうど、大好きなしほ先輩と萌咲先輩と出会ったあの時。
✲✲✲
苦手のカケラ~だって今だけだから~
高身長でスラっとした長い脚。さり気なくオシャレに服を着こなすあいつは、比較的に顔も整っている。
例えば少し目つきは悪いけれど、二重のその瞳は意志がしっかりと備わっている深い黒で、瞳と全く同じ色のその髪と合わせて、独特の雰囲気が、ある。
高身長は遠くからでも目立って、舞台映えする。それで、独特な雰囲気と印象的な瞳っていうのは、人の記憶に残りやすい。
だから、役者にちょうどいいって、思った。
それで、みんなはあまり気にしないけれど、整いすぎてないっていうのも実はポイント。
一度みたら忘れられないくらいにイケメンっていうのも、ハマリ役っていうのに出会ってしまうと、人によっては、ずっとその役が付きまとってしまったりするから。
だから、あいつは、ある意味すごい逸材だと思う。
整っているのに整いすぎていない顔立ちに、舞台映えする体格。さらにちゃんと、人の記憶に残りやすい要素を兼ね備えているから、何にでもなれる。カメレオン役者と、いうのだろうか。
そういう素晴らしい可能性を秘めた男が、俺の目の前で、照明のセッティングをしている。
……本当に嫌味な男だ。
この心を隠すために、いつものように、特にズレている訳ではないけれど、カチャカチャと眼鏡をかけ直す。
俺は、水戸。演劇部の部長で、脚本と舞台演出を担当している。
目の前で黙々と裏方の仕事をこなす嫌味な男は、瀬戸。
演劇部なのに、一度も演技をしたことがなくて有名な自分たちのことを、人々はセトミトコンビと、呼ぶ。
俺はこいつと一緒にされるのが、ずっと嫌だった。
だって俺は、本当は舞台に出たくて仕方がなかったから。
それなのに、こいつは出られるのに、あえて出ない。
それが心底羨ましくて、腹立たしかった。
あれはいつの日だっただろうか。
俺は瀬戸の役者向きな要素に気づき、演劇部に勧誘した。
「お前、演劇部に入らないか?」
「えっ、俺……?」
「そう、お前」
「…………別に、いいけど」
「じゃあ決まりな」
それなのに、あいつは今日に至るまで、一切合切、どの演目にも出たことがない。
「じゃあお前、次の主役の王子な」
「え、嫌なんだけど」
「は? 主役だぞ?」
「俺、演劇部に入るって言ったけど、舞台にあがるとは言ってない」
「は?」
「……目立つのが嫌いなんだ。裏方がしたい」
「……は?」
主役が嫌なのかと思って、他の目立たない役にキャスティングしたりしてみたけれど、あいつは絶対に断って、裏方の仕事しかしなかった。
だからあいつは幽霊部員。基本、バイトばっかり。
そのクセ、発表が近づいてくると、わざわざ裏方の仕事確認しにきて、リハーサルも本番当日もしっかりと参加する。しかも、台本も律儀に全部覚えてくるんだ。
だからあいつは、演技はしないけど、大切な演劇部の部員。
あいつがいないと、やっぱり当日の出来栄えが、違うんだ。
一度、体調不良であいつが来れなかった時、別に大丈夫って言ったけど、全然大丈夫じゃなかった。いつも、本当にすごく細かいところまで、客観的にみんなのこと見て、動いてくれてるんだ。
そのことに気づいたら、余計に悔しくなった。
なんでこいつ、舞台にあがらないんだよ。
それでなんで、舞台にあがらないのに、こんなに演劇部に必要なんだよって。
すごく、羨ましく思ってしまったんだ。
だから、こいつと一緒にされるのは本当に嫌だった。
だけど人々は俺たちのことをセトミトコンビと呼び、まるで二人で一つみたいに演劇部内で扱われるから。特に仲がいい訳では断じてないけれど、仕方がなく、一緒にいてやる。
でも今日は気まぐれが起きて、ふと、目の前にいる嫌味な男に常々思っていた疑問を、聞いてみる。
「お前、何で演劇部に入ったんだ? 目立つの嫌いで、裏方しかしないのに」
正直、自分で聞いておいて、心の中ではもう、聞くまでもないとも思っていた。どうせ、就活での話題とか、そういう点数稼ぎの部活だろうなって思っていたから。
現に、文化部はそういう就活での点数稼ぎに入部してる奴、少なくないし。
そしたら、瀬戸はすぐには答えなくて、しばらく固まって、顔を背けて言う。
「……ったからだ」
「は?」
✲✲✲
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