オリジナル小説

星のカケラ~カケラを覗き見る~カケラはやがて星になる

2022年7月6日

スポンサーリンク

はるぽ
まだ本編をお読みでなく、真っ新な状態でお楽しみ頂きたい方は、こちらは本編読了後にご覧頂くことをオススメさせて頂いております✲よろしくお願いします✲✲
星のカケラ―特別編― カケラはやがて星になる

 

「これが三波さんの試験結果になります」

 そう言って渡されたのはC判定のテスト結果。

「B判定以下の人は再試験となります。日程は後日、追って連絡します」

 その後、何て答えたのかはよく覚えていない。

 学校帰りに入ったシフト。
 いつものように注文されたケーキを箱に詰めて、レジを打って、お客様に渡していく。

 こんなにもケーキに関わっていたのに、卒業試験に落ちてしまうのだから、時間って無常だな。そんな風に思いながらも、バースデーケーキの注文だから、なるべく心を込めて、精一杯笑う。気を抜いたら涙が出そうで、だけど今の自分には、ケーキに関わる道が接客しかないのだから、この時間は貴重なんだと、言い聞かせながら。

 その繰り返しで、バイトの時間が過ぎ去っていく。

「ねぇ、しほちゃん。今日はちょっと厨房の方を手伝ってくれない?」
「……え、でも、私……」
「大丈夫、大丈夫。新作メニューの味の確認だから」

 そう笑顔で言われ、しほは厨房へと入っていく。

 渡されたのは、来春から使う予定の、桜の花弁をモチーフにした、新しいケーキ。慌ただしいクリスマスを過ぎてすぐだというのに、もう、次の新作に取り掛かっている。

「食べてみて? まだ試行錯誤中だから、感想がほしいんだ」

 何も聞かずに、紅茶とケーキを差し出してくれるこの人は、白いコックコートを着ていて、この店でパティシエをしている。

「……花弁に見立てたチョコの、溶け具合が、絶妙です」

 口に入れてすぐに溶けるのに、一瞬ではなく、ちゃんと味を堪能できるまで残る絶妙な花弁のチョコの厚み。

 チョコの桜の薫りは、強め。だけど、ケーキの生地の方は、シンプルなスポンジケーキにしてあるから、後味はしつこくない。

 よく桜餅の薫りは苦手、なんて人もいるけれど、生地には何も入れていないから、やんわりとチョコの方に薫りが残るくらいで、桜そのもののケーキというより、春の良いところだけを味わうような、可愛いケーキとして、多くの人がきっと、食べやすいだろう。

 完璧で、優しさの詰まったケーキを目の前に、ポトリと一滴の涙が零れ落ちる。

 その雫が一緒に出された紅茶の海に沈み、色ごと飲み込まれていく。ただ振動として、紅茶の上に広がる、弧だけを、残して。

「私……」
「うん。何があったの?」

 完璧に笑って、誰にもバレないようにしていたつもりなのに、いつもすぐに気づいてくれるのだから、この人には敵わない。

 紅茶がすっかりと冷めてしまった頃、涙は止まり、この店の店長であり、恋人である彼と再び目が合う。

 いつもの弧を描いた眉と、細めた瞳で安心させるように、微笑んでくれている、そんな彼と。

「どうする? よかったら、話してみない?」

 だから、涙入りのすっかりと冷めた紅茶を一口飲んで、気持ちを落ち着かせてから、言う。

「私……卒業試験、落ちちゃった」

 絶望か、それとも恥ずかしさか。諦めか、それとも悔しさか。

 なんの涙か分からない、そんな涙入りの紅茶が、身体の中へと浸透していく。

 自分自身に、問うように。

 私は本当に、ケーキを作りたいのかな?
 私は本当に、ケーキが作れるのかな?

「そっか。大丈夫、大丈夫だよ」

 声をあげて、泣く。
 何となく察してくれた加山さんたちが、しほの代わりにクローズまで残るからと言ってくれて、二人で抜け出す。

 あんなに可愛くて美味しい桜のケーキを食べたのに、私の桜は、まだ咲かない。頑張るだけじゃ、桜って、咲かないって知ったの。

 私の好きが、ワカラナイ。
 私の好きを、続けていいのか、ワカラナイ。

 わからない、分からないの。

 苦手なところから始めたお菓子作り。

 きっと、人には得意、不得意がある。
 それで、人には好きと、嫌いがある。

 好きと、得意が一致しないの。

 自宅に帰って、浩さんが眠った頃合いに、そっと開く、保育士免許証。

 ああ、ワタシは何が好き?
 きっと、私はコレがトクイ。
 ああ、ワタシは何が嫌い?
 きっと、私はコレがニガテ。

「どうしよう。どうしたらいいのか、わからないよ」

 弱々しい自分の声だけが、静かな二人の部屋に、響いた。

 そっと、疲れ果てて寝息を立てる、恋人の姿を見る。

 星宙パティスリーを離れたら、どうなるのかな。
 保育士のお仕事に戻っても、一緒にいられるよね?

 でも、ケーキがやっぱり、作りたい。

 すごく、好きなの。ケーキも、あなたも、星宙パティスリーも。

 ああ、やっぱりカケラの色はそれぞれに決まっていて、変わることなんて、ないのかな。

 ねぇ、星って、みんなに平等に、輝くチャンスって、あるのかな?

「私の2年間、無駄になっちゃうかも……」

 いつの日かに食べた、星のカケラを思い出しながら、涙を零し、眠る。ほんの少し、恋人から離れて。大好きなのに、横にいる恋人の星の輝きは、今のしほには少し、眩しすぎるから。

 

✲✲✲

 

続きは星のカケラ―特別編― カケラはやがて星になる にてお楽しみ頂けます✲

 

はるぽ
実は加山さんは番外編と特別編からたくさん登場してます♡

星のカケラ①~③はBooth はるぽのアトリエにて販売中✲
星のカケラ―特別編―はゆふまるさんとのコラボSHOP、ぽことゆるまるのカケラにて発売中✲

✲はるぽのアトリエ✲

BOOTHhttps://haruposatelier.booth.pm/

星のカケラ全3巻、発売中!

✲ぽことゆるまるのカケラ✲

BOOTH:https://pokoandyufumaru.booth.pm/

星のカケラ―特別編―、発売中!

グッズ coming soon°˖✧

 

❁イラストのお問い合わせはコチラまで❁

ゆふまる(お縁描き堂・rie)

Instagram https://www.instagram.com/rie_y13
Twitter https://twitter.com/oekakidou_rie
ココナラ https://coconala.com/users/838663

ゆふまるさんはお仕事も受付中です! お仕事のご依頼はココナラもしくは各種SNSのDMまで!

 

❁小説のお問い合わせはコチラまで❁

はるのぽこ

お仕事のご依頼も下記よりお願い致します♡

HPお問い合わせフォームより

 

注意

イラストの著作権はお縁描き堂・rie(ゆふまる)さん、詞、キャラクター、ストーリー及びHP内の文章の著作権ははるのぽこのものとなります。無断転載、複製、自作発言等はご遠慮くださいませ。ご理解、ご協力の程、よろしくお願い致します。

 

星のカケラ~カケラはやがて星になる~

星のカケラ~はるのぽこ×お縁描き堂rie(ゆふまる)コラボ企画

-オリジナル小説

© 2022 はるぽの和み書房