陽によう
陽ようによう 炊飯器のスイッチを押す。 それを合図にグラスに注ぐのは、少し度がきつめのアルコール。 窓越しに日の光が差し掛かり、炊飯器が仏のごとく、輝きを放つ。 その光景を眺めな ...
まわる、コーヒーカップ―旋―
まわる、コーヒーカップ―旋― ※一話完結「めぐる、メリーゴーランド―螺―」と対の物語になります。まだそちらをお読みでない方は、―螺―からお読みくださることをお勧めします! 「めぐる、メリ ...
めぐる、メリーゴーランド―螺―
めぐる、メリーゴーランド―螺― 『ここは運命の螺旋階段。登りついたその先に、あなたの人生みちがあります』 通された扉の向こうには、仄暗い一本の道が続いている。 その道を ...
私の新しい城
私の新しい城 玄関から順に、確認の意味でゆっくりと歩き出す。 下駄箱はないから、パンプスやスニーカーを隅にぎゅっと並べて、正方形の本当に靴を履いて脱ぐだけの小さなスペースが、私の新しい城の入り口。 ...
私の散歩コース
私の散歩コース 「やあ、おはよう。今日も来てくれたんだね」 彼が今日も私に声をかけてくれる。もうすっかりと、彼の吐く息が白く染まり始めて、気が付けば私たちが歩く道には紅葉が多く散らばっ ...
四季折々~私の一番好きなケーキ~
四季折々~私の一番好きなケーキ~ 「いってくるよ」 「うん、いってらっしゃい」 そう言って、あなたは振り返ることなく行ってしまった。 四季折々~私の一番好きなケーキ~ & ...
放課後に降るサイコロの雨
サイコロを、振る。 手から零れ落ちた瞬間に、その小さな箱は机の上に跳ねて、さらに勢いを増して床へと転げ落ちていった。 視界に映りこむのは赤いひとつの点。 「いち」 ...
ウグイスが鳴く夏に
じっとりと汗が滲んでくる。張り付いたTシャツ。寝返りを打つと広がるムワッとした空気。意識が少しずつ、夢から現実へと引き戻されていく。 暑い。蒸し暑い。 そんな気持ち悪さを掻き消すか ...