世界の子どもシリーズ

世界の子どもシリーズNo.5_過去編~その手に触れられなくてもepisode0.5~

2024年9月7日

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世界の子どもシリーズNo.5_過去編~その手に触れられなくてもepisode0.5~

津波や災害を連想させる言葉や描写があります。苦手な方は該当シーンを飛ばし読みするなど、何卒、無理してお読みなさらないでください。

 

『波がくる! みんなすぐに逃げて!!』

 私が声を張りあげた途端に、賑わう市場のほんの一部の声が、割れる。けれど視線が一気に集中したかと思うと、白い目でこちらをみて、すぐに自分たちが今まさに行おうとしていた動作へと、みんなが戻っていくのである。

『お願い、逃げて!』
『はぁああ。またですか? 星詠みとやらのことですか? もしそれが当たっていたとして、この間は波は一週間以上先だと言っていたではありませんか。全く、姫というのは甘やかされたのか、いいかげんな』
『嘘じゃないわ! 波が早まった! お願いだから、今すぐ逃げて!!』
『そうですね。早まった、遅くなった、波が来る。もう来ない。ははは、勝手に言ってなさんな』

 どれほどに声を張りあげても、右をみても、左をみても。ある者は鼻を鳴らして笑い、ある者は無視して、市場で買い物を続けるのだ。私の声自体は届いているのに、その言葉が、きっちりと届かないのである。

『ママ、逃げなくっちゃっ!』
『こら、敵国の姫の話なんて聞いてはいけません』

 ああ、どうして。今は敵ではないわ。みんな、平和同盟を結んでこのサンムーンへと来たじゃない。それにこれまでだって、ムーから戦争を仕掛けたことなど、一度もないというのにっ。
 走っても走っても、声をあげても声をあげても、誰もが素通りしていき、仲良くしていた子どもたちだけが、信じて逃げようとするのだ。それなのに、傍にいる大人が無理矢理に手を引き、逃げようとする子どもらを叱り、止めるのである。
 いつまでも子どもたちが戸惑った様子で私を見て、多くの大人たちが敵意と悪意に満ちた目をこちらに向けて、小さく悪態をつき、トキには堂々と罵るのである。

『黙って自分の国に帰りなっ!』
『お願い、信じて逃げて。崖の方へと、逃げて!!』

 乾ききった喉ははりついて、上手く震わすことができなくなった。それでも声を出そうとし、とうとう自身の吸い込んだ息でむせ、いよいよ水が欲しくなった。それなのに、それらを買うということが、頭に思い浮かばないのだ。きっと、思い浮かんだとしても、買う余裕も時間もないのだろうが。それでも何とか唇を震わせ、ただ声にならない声を出そうとして、また、よく知らない誰かの敵意ある目と視線がぶつかり、完全に口を閉ざす。恐怖以上にやるせなさと絶望的な気持ちが、なんとか心を保っていた緊張の糸をぷつりと切ってしまったのだ。
 崖の方に視線をやると、ムーの宙船が待機して浮かんでいるのが見えた。市場をまっすぐに抜ければ、例の階段へと辿り着く。その階段の向こうに続くのは、ここにいる私を都合よく使い、罵る者たちは立ち入ることのできない、波に巻き込まれる恐れもない、特別な部屋。くぐりたくて仕方のない白い扉と、とても、とても愛おしく大切な人が、そこにいるのだ。
 反射的に喉に手を添えると、まるでそれを待っていたかのように、心の中での言い訳が、一気に押し寄せてくる。
 声が出なくなってしまったから、もう戻っても、いいだろうか。伝えるだけ伝えたから、私は悪くはないのではないだろうか。
 届かぬ言葉を叫ぶために、危険な地に足を置く必要はあるのだろうか。
 みんなが、星詠みをしろというくせに、自分たちが望む未来ではなければ、嘘を言っているのではないかと、疑う。未来が分かるというのならば、なぜ、波を防げないのかと、問う。全員の避難場所を星を詠んでみつけろと、詰め寄る。
 それなのに! 本当に心から信じたりなどしない。問うだけ問うて、答えを待つだけで、不平不満を言うだけで、自らは何も動かない。そうしてやっぱり言うのだ、自分たちが望む未来が視えるまで、星を詠めと――……!
 抑え込んでいた心の奥底の叫びと、深い怒りが、身体中の血と共に駆け巡っていく。
 すると、足がいつの間にか、市場から崖へと続く道とは反対の方を、向いていたのだ。そこからはあっという間で、勝手に、まるで魔法の靴でも履いたかのように、例の階段の方へと足が動いていく。
 姫としての意思が、ひとりの生ける者としての心に、負けてしまったのだ。本来ならばきっと、それは間違いではないのに、逃げることで私は姫としてだけでなく、ひとりの生ける者としての大切な何かを失うのだから、やはりこれは、私にとって正しくはないことなのだ。
 私が本当に頑張らなくてはならないのは、一度目の波が来た後の、避難誘導。それでも、姫だというだけでこれほどまでに敵意の満ちた目を向けられて、姫だというだけで、大切なものをたくさん、たくさんあの特別な部屋へと置いて、全てを我慢して。伝わらない言葉を、叫ばせてはもらえない心の内を、どう伝え、どう抑えればいいというのだろうか。
 もう、いいかな? 私は弱い、もう、いいだろうか。
 全部捨ててしまって、心のままに白い扉の向こうへと行きたいと、階段の方に向け走ろうと足を速めだしたころ。遠くでドンと音が響いたかと思うと、足の裏から小さな振動が、この土地に、この身体に、伝わってくるのである。
 その振動は響いた音の割には小さく、市場の露店に並ぶ品々をぶつかりあわせるも、机からそれらが落ちることのない程度のもの。振動がしっかりと足の裏から身体へと伝わるというのに、数十秒ほど力を入れて立っていれば、過ぎ去るものだった。
 誰も、この規模では波がくるなどとは、思いもしないのだ。けれど、先ほどまでの私の叫びを聞いた何人かは、流石に不安になったらしい。念のために高台へと登ろうかと悩み始めた頃、ゴゴゴゴゴゴという音と共に、空が突然、影に覆われるのである。

 ああ、もう私も、みんなも、間に合わない。

 そこで辺りは真っ暗になり、私の意識は途絶えていく。きっと、その未来にいる自分が最期を迎えたであろうことが、経験上、感じられた。星は最期の直前までを私に視せ、決して最期のその瞬間までは、視せない。徐々に脳内で起こったおぞましい波にのまれる光景が遠のいていき、視えるもの全てがただの純粋な光へと変わり、私の中へと、潮の匂い、風が頬をなでる感触、穏やかな海とカモメが鳴く音が響きだす。そして意識が完全に戻ってくると同時に自分を襲うのは、未来を視たときに脳が得た経験の、現実世界での身体による後追い。恐怖で全身に鳥肌が立ったかと思うと、否応がなく筋肉が強張ったままに震えが止まらなくなり、胃が押しつぶされると思った頃には、既に嘔吐していた。ただ最近は禄に食事もとれていなかったからか、地面へと落ちるのは、水分と胃液くらいだった。

「はっ、はっ……はあ……はあ……ダメ。それでは……ダメだわ」

 もう胃の中のものを出し切ったと思うのに、それでも多くの水滴が、地面に突っ伏す動作にあわせて、雨のように落ち続けていく。見開いた目からいつの間にか零れていた涙が、鳥肌のたつ全身から伝う汗が、そうさせるのである。悪寒がひどく、震えが止まらないというのに、すごい量の汗をかいていたのだ。それは先ほどムーに魔法陣を繋いだトキとは比べものにならないくらいで、背中どころか、汗で全身へとひっついたドレスが、この場にいる自分の居心地の悪さを象徴するかのように、とても気持ち悪かった。
 あの階段を駆け降りていたときから、昼の星は、私に神殿へ行くように囁いていた。それは守衛を撒くために違いないと、私は段数を数えながら信じて疑わなかった。けれど、いざ誘導へと動くためにしっかりと星を詠むと、市場の方へと羅針盤が示した未来を告げに行くのは、星が知る中で一番残酷なものにしかならないと、おぞましい体感と共に、私自身も知ることとなったのだ。けれど星が視せたその光景は、恐怖や絶望そのものよりも、逃げ出そうとする弱い自分の、醜い心を知ることとなったのが一番に苦しく、自分で自分をあざ笑いたくなった。

「そうね。せめて……伝わる人にだけ……残りの時間は神殿から動かない方がいいかもしれない」

 けれど、星の声はとても優しい。決して未来に視えた弱い私のことを責めることなく、胸を締め付けるような、常に心が私と共にあるかのような、嘆きにも近い切実な声で、お前は弱くなどない、神殿にいろと、囁き続けるのだから。
 ずっと、波の予知情報が入ってからというもの、アヴァロンとムーからは他の星の国々にサンムーンからの撤退や一時的な避難勧告を出していた。けれど、元々の中立国はそれを信じたものの、このサンムーンという地球箱庭プロジェクトから同盟に入った国々は、決して、信じようとはしなかった。特に、星詠みや魔法とかけ離れた世界の星に住まう国の者や、サンムーンを物流の本拠地にしようと動きだしていた国々は信じないどころか、ムーやアヴァロンが利益を掠めとるための戯言だと、反発が酷かったのだ。そこで開かれたのは、一番にひどい被害が予想される、国をあげての地下世界移住予定のあるレムリアとアトランティス、王族で星詠みができる者がいるアヴァロンとムーによる、四大国会議である。宇宙法に定められたこの会議は、地下世界の拠点、サンムーンで開かれることとなった。
 そして、どの国もいつ戦争が起こってもおかしくないくらいの緊張状態にあり、王が国を離れることが難しかったために、この会議への出席は、各国の姫と王子に任されたのだ。
 宇宙中のなかでも群を抜いて大国と呼ばれるムーとアヴァロンをよく思わない星の国々は多く、会議へと赴くために街へと来ては、顔も出身も知らない初対面の者からも、度々罵声を浴びたものだ。
 けれど、レムリアとアトランティスは元々にアヴァロンとムーと親交が深く、避難自体に異論はなく、会議そのものが中止されることはなかった。羅針盤の視せる光景から予知を重ね、最終的に地下世界の海と相性のよかった彼らは、波にのまれる前に、海に還ることで話がまとまったのだ。故に、アトラントの皇子とレムリアの姫は、波がおこった際の海の中での避難に備えるため、今日の会議からは来ないことで話がまとまっていた。
 例えば、レムリアとアトランティスだけでなく、他の星の国々もすぐに避難に応じてくれていれば、彼らが海へと還ることに決めた時点で会議はすぐに終了し、このサンムーンという都市も閉じられていたことだろう。
 けれど、それでもまだ、信じずに日常をこのサンムーンで送る人々は多くおり、さらに言うと、星詠みを信じて避難しようとしているのに、サンムーンで生まれ育ったからだろう、既に新たな生命体として、どこの星にも体質が合わず、逃げられない者がいることが判明したのである。
 会議は終わりの見えぬままに続き、とうとう主に陸で過ごす者は避難場所を得られぬまま、今日という早まった波の日を迎えてしまったのだ。
 私は呼吸と涙が落ち着いたところで、手の甲で口元をぬぐう。そしてあまり力の入らぬままに身体を起こし、展望台の街が見渡せる方へと、よろよろと歩き進めた。そこから覗き込んで映る光景というのは、先ほどまでに視たものと、似て非なるもの。今日という日が当たり前の日常だと信じて疑わない者たちが行き交い、市場は賑わっているのだろう、絶えず誰かの声がいくつも重なって響き、笑顔を浮かべる者が多くいるのだから。

「もっと……もっと……上手く伝える術を見つけられたらよかったのだけれど……」

 もし私が動くのならば、一度目の波が来たあと、この神殿にいる人たちや神殿へと逃げてきた人たちを、安全な場所へと導くことだろう。
 ここの柱が倒れる前に、ひとりでも多く、二度目の波の到達より先に崖の向こうへと向かわせなくてはならない。
 唇を噛み、来るべきトキに備え、せめて魔力を少しでも多く蓄えようと、胡坐をかき、柱の前へと据わり込む。

 この辺り、森は近い。けれど、森そのものにいる訳ではないから、自然エネルギーをため込むのならば、風から分けてもらうのがいいだろう。

「ああ、恐ろしやっ。どうか、どうか……」
「主よ、我らをお助けください」

 神殿の中からだろうか、サンムーンに住まう者の、来週に来るはずと信じて疑わない恐怖への嘆きと祈りの囁き声が、私の耳にまで入ってくる。それらは私に焦りと、もどかしさ故の怒りを与え、集中力を乱していく。本当はすぐにでも声をあげ、ここにいる人たちにも、市場にいる人たちにも逃げよと叫びたい。けれどきっと、一人でも多くの者を助けたいならば、先ほど視た未来を回避したいならば、せめてここで祈りを捧げ私の声を信じてくれる可能性の高い人たちへと伝えることくらいしか、無力な自分にはできないのだ。それも、不安を煽らないよう、事が起こってから、ギリギリの段階で動くという選択肢しか、思い浮かばない。

 ああ、私はなんて情けなく、弱いのだろうか。

 けれど、雲から抜け出した太陽が、眩くその全身を空に輝かせ、その光をこの地へと、私へと浴びさせる。そしてそれと同時に、星々の声が集中して、強く、とても強く、私の心の内へと響くのである。

『諦めてはいけない。神殿へ行くといい。神殿へと行くんだ!』

 いくつもの柱が倒れる光景が、神殿へと着いた頃には幾通りも視えた。それは甚大な被害を与え、一度目の波を逃れた者にまで、容赦なく襲い掛かり、二度目の波を逃れようとする者を、無情にも阻むのである。
 その被害を少しでも防ぐために、私はここに、既に神殿にいるはずなのに、星々はずっと囁き続けるのである。神殿へ行け、と。
 未来は一分一秒で、変わっていく。羅針盤が示すように、確定事項として、定められた時間が来てしまえば、もう避けられないものになってしまうことも、トキにはある。けれど、私たちが生きるために行う選択というのは、些細なものも含め、無限と言っていいほどにあるのだ。まずは幾通りもある選択の中からどうするのかを決め、さらにそこから数多もある選択肢を選ぶことを繰り返し、行動していくのだから。そしてそれらは自分ひとりだけでなく、他者とも交わりを広げ、未来というものを作り上げていく。だからこそ、未来は一分一秒で変わり、完璧な未来予知など、誰にもできはしないのだ。
 そして、星たちは未来の選択肢のひとつを視せては警鐘を鳴らし、どうなるのかではなく、今、どうすればいいのかを囁くのである。
 訳が分からないまま、どのみち集中できずに魔力を蓄えられないのならば、私も神殿でそのトキまで祈りを捧げようかと、中へ入るために立ち上がる。
 会議は必ず、彼の意向で、星詠みのしやすい夜になされることが多かった。私は会議の前、何度も何度も、ここに通っては祈り続けた。真夜中の神殿は、ひとっこひとりおらず、怖いくらいに静か。けれどだからこそ、私は貸し切り状態でこの神殿を動き回っていたため、ここの勝手はとてもよく、知っている。
 それなのに、昼の神殿に入るのは初めてなのだから、可笑しなものだ。
 神殿の扉を目の前に、こんな場合ではないというのに、ふっと笑みが漏れた。けれどもこの笑みは、確かに自分自身のことを笑うものなのに、先ほどに感じた自分自身をあざ笑うそれとは、違うのだ。
 そのことに気づいたそのトキ、自分自身のことも、他者のことも、全てを赦せるような心地になっていくのである。
 私は今、心のどこかで最期を覚悟しているはずなのに、特別なことどころか、結局のところ、いつもと変わらぬことをしているのだから。姫だからと動いているけれど、姫のままに、私も今、市場を行き交う者と同じように、きっと日常のひとときを過ごしている。そしてそれは、確かに特別ではない、いつもと変わらぬ行動のひとつであるのに、怒りと悲しみと、彼を想う愛おしさ。いくつもの感情だけが、大きく、とても大きく駆け巡っていくのを、私は先ほどからずっと感じている。
 言葉にはできない不思議な感覚のまま、なじみ深いその神殿の扉に手をかけようとしたそのトキ、ちょうど中から外へと出る者が、先に扉を開けた。それを避けようとして視線をあげると、私の視界の中に、とても、とても懐かしく温かな色が、映り込むのだ。

「……カイネ様!」

 目があった瞬間に、円らな瞳をクリッとさらに丸くさせ、淡い黄色い髪と同じ、彼女のまだ可愛らしい鳥の羽のそれが、感情に反応するかのように小刻みに揺れたのが分かった。

「ミア?」
「カイネ様!」

 彼女は躊躇うことなく、私に抱き着いてくる。式典で会ったトキよりも背の伸びた彼女の頭が自身の顎に触れる。彼女はこの森に住むからだろう、木々の爽やかな薫と、たっぷりと太陽を浴びた草花の温かな匂いが漂ってくるのだ。そしてそれらは、抱き着く彼女の体温と共に、私の心に一筋の風を通していく。
 彼女を抱きしめ返し、力なく笑いながら、私はやはり、この緊急時には関係のないことを、つい、嬉しさのあまり聞いてしまうのだ。

「あなた……こっちの姿の私でも分かるのね?」

 私の胸の中で、彼女はどこか照れた笑みを浮かべながらも、何度も頷いた。その姿はとても愛おしく、けれど照れているあたり、子どもながらにも、もうただの幼い子ではないことが覗えた。そしてそれは、アヴァロンとこの地に来られなくなってしまったあのトキからの四年という時間の経過を、悲しみだけでなく、喜びとしても感じさせた。

「あのトキも少しだけれど、こちらのお姿もお目にかかりました。……それにカイネ様のことは、どんなお姿でも間違えません。近くにいるだけで、とっても、とっても、心が優しくて温かくなるから。会議に来られていると聞いて……神殿に通っていたら、もしかしたら会えるかもしれないって思ってたんです」
「……そう、ありがとう。あなたにもう一度会えるなんて。……大きくなったわね」
「まだ飛べないけど、ずっと、練習してます」

 そう答える彼女の瞳のその奥から強い意志が感じられ、それらは弱りきった私にもう一度、勇気を与えてくれるのである。

 ああ、そうだ。この子の生きる場所はここ、サンムーン。……守らないと!

 私の時間から紡ぎ出される全てが、一秒でも過ぎ去りしそのトキから、私の一日。私の、日常。そしてその日常を、見知らぬ誰かも送っていれば、私の愛しい人や、大好きなアヴァロンの者、大切なこの子たちも、今この瞬間も、送っているのだ。
 私は私の日常の中で、特別なことをすると構えるのではなく、明日という日常を迎えるために、生きる選択を最後の一秒まで生ききって、行わなければ。
 慈しむように、何かを託すように、私はミアの頭をそっと撫で続けた。
 恐がらせてしまうだろうけれど、言わなくては。この子はまだ飛べない。だからこそ、早く逃がさないといけない。小さく唾を飲み、私が口を開こうとしたそのトキ、すぐ傍に控えていた男性に、声をかけられる。

「あなたが、カイネ様ですか?」

 

世界の子どもシリーズNo.6

その手に触れられなくてもepisode0.75

 

※毎週土曜日、朝10時更新予定🐚🌼🤖

 

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