小説・児童文学

星のカケラepisode0~まだ小さいカケラ~

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星のカケラepisode0~まだ小さいカケラ~

 

「今日でバイト最後だから、これ三波にやるな」

 そう言って渡されたのは苦手な激辛フードの詰め合わせ。

「三波も激辛好きだったよな。今までありがとな」

 その後、何て答えたのかはよく覚えていない。

 入れ替わりで入ったシフト。
 いつものように注文されたケーキを箱に詰めて、レジを打って、お客様に渡していく。

 こんなにもぼんやりとしているのに、ケーキをつぶさずに詰められるのだから、私も成長したものだな。そんな風に思いながらも、バースデーケーキの注文なのに、上手く笑えているのか分からなくって、気を抜いたら涙が出そうで、やっぱり、全然成長なんてしてないや。

 その繰り返しで、バイトの時間が過ぎ去っていく。

「ねぇ、しほちゃん。今日はちょっと厨房の方を手伝ってくれない?」
「……え、でも、私……」
「大丈夫、大丈夫。試作品の手伝いなだけだから」

 そう笑顔で言われ、私は厨房へと入っていった。
 渡された白いエプロン。既に用意されている材料。言われるままに、それらを混ぜて行き、何ができるかも分からないまま作り進めていく。

「これで、いいんですか?」
「うん、後はここに好きな色を入れて」
「好きな……色」

 ふと思い浮かぶのは、先輩が好きだった青。先輩の好きな野球チームの色で、私の鞄の中には、今年になってファンになったばかりのそのチームの観戦チケットが二枚入っている。

「一色だけでも、何色か混ぜてもいいよ。琥珀唐で星のカケラを作ろうと思って」

 店長に促され、自然と手が伸びたのはやっぱり青で。数滴垂らしてみると、透明な液体の右側半分が青に染まっていき、それを見て気づく。私では、この色じゃダメなんだと。

 歪む視界の中で、それを打ち消したくて、慌てて違う色を垂らし直す。

 けれども、今度はその色が左側半分を占領するだけで、青を消してくれることはなかった。私はただ青と黄色を喧嘩させただけで終わってしまったのだ。
 消えない色に胸が苦しくなり、ポトリと一滴の涙が零れ落ちる。
 その雫が黄色の波を作って、青に被さった時、それらは交じり合って弧を描くように新たな色を作り出した。

「緑……」
「うん。綺麗だね」

 そんな私の涙が乾いた頃、それらは固まり、店長によって綺麗な宝石へと変えられていった。

「食べてみる?」

 乾燥させる前に、味見でと渡されたまだ柔らかい私のカケラ。

「苦くて、甘い」

 口に含んだ瞬間、私の中へと溶けていった。ほろ苦い恋と、初めて知った蜜と、私の色と共に。

 

 

to be continued……

 

 

はるのぽこ
何年も前になりますが、クリエイターのマッチング企画でゆふまるさんと出会った時に生まれた作品になります。当時は条件を満たさずエントリーがかなわなかったのですが、こちらのepisode0はイラストと詞に合わせて、きっかり1000字で作ったものになります。その後、ゆふまるさんとコラボとして、こちらのホームページで続きを連載させていただいておりました。episode1以降、モエ、アンナ、シホ……とオムニバス形式でストーリーが続いていきます🎨コラボしてくださったゆふまるさんに心から感謝を込めて

 

星のカケラ―はるのぽこ×ゆふまる

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