「今日でバイト最後だから、これ三波にやるな」
そう言って渡されたのは苦手な激辛フードの詰め合わせ。
「三波も激辛好きだったよな。今までありがとな」
その後、何て答えたのかはよく覚えていない。
入れ替わりで入ったシフト。
いつものように注文されたケーキを箱に詰めて、レジを打って、お客様に渡していく。
こんなにもぼんやりとしているのに、ケーキをつぶさずに詰められるのだから、私も成長したものだな。そんな風に思いながらも、バースデーケーキの注文なのに、上手く笑えているのか分からなくって、気を抜いたら涙が出そうで、やっぱり、全然成長なんてしてないや。
その繰り返しで、バイトの時間が過ぎ去っていく。
「ねぇ、しほちゃん。今日はちょっと厨房の方を手伝ってくれない?」
「……え、でも、私……」
「大丈夫、大丈夫。試作品の手伝いなだけだから」
そう笑顔で言われ、私は厨房へと入っていった。
渡された白いエプロン。既に用意されている材料。言われるままに、それらを混ぜて行き、何ができるかも分からないまま作り進めていく。
「これで、いいんですか?」
「うん、後はここに好きな色を入れて」
「好きな……色」
ふと思い浮かぶのは、先輩が好きだった青。先輩の好きな野球チームの色で、私の鞄の中には、今年になってファンになったばかりのそのチームの観戦チケットが二枚入っている。
「一色だけでも、何色か混ぜてもいいよ。琥珀唐で星のカケラを作ろうと思って」
店長に促され、自然と手が伸びたのはやっぱり青で。数滴垂らしてみると、透明な液体の右側半分が青に染まっていき、それを見て気づく。私では、この色じゃダメなんだと。
歪む視界の中で、それを打ち消したくて、慌てて違う色を垂らし直す。
けれども、今度はその色が左側半分を占領するだけで、青を消してくれることはなかった。私はただ青と黄色を喧嘩させただけで終わってしまったのだ。
消えない色に胸が苦しくなり、ポトリと一滴の涙が零れ落ちる。
その雫が黄色の波を作って、青に被さった時、それらは交じり合って弧を描くように新たな色を作り出した。
「緑……」
「うん。綺麗だね」
そんな私の涙が乾いた頃、それらは固まり、店長によって綺麗な宝石へと変えられていった。
「食べてみる?」
乾燥させる前に、味見でと渡されたまだ柔らかい私のカケラ。
「苦くて、甘い」
口に含んだ瞬間、私の中へと溶けていった。ほろ苦い恋と、初めて知った蜜と、私の色と共に。
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